主要20カ国・地域(G20)首脳会議が6月28日から大阪市で始まった。首脳会議に向けた関係閣僚会合での論議が、首脳会議で採択される成果文書に結び付く。関係閣僚会合での論議を紹介する。(オルタナ総研コンサルタント=室井 孝之)

G20サミットの会場

農相会合(5月11日、12日、新潟市)では、「世界的な人口増加に対応するための持続可能な農業の推進」「生産性向上に向けて人工知能(AI)など先端技術の活用」などが閣僚宣言された。

財務省・中央銀行総裁会議(6月8日、9日、福岡市)の共同声明では、「世界経済は、貿易と地政学を巡る緊張は増大」とし、「質の高いインフラ(社会基盤)投資に関するG20原則」を承認し、中国に「大国の責任」を促した。

国際課税は、経済協力開発機構(OECD)がまとめた新たな国際課税ルールの作業計画を承認した。巨大IT企業への課税強化を念頭に置いたものだ。

その一方、貿易摩擦緩和の具体策への言及はなく、今年も保護主義への対抗と言った文言は盛り込まれなかった。

貿易・デジタル経済相会合(6月8日、9日、つくば市)の閣僚声明の骨子は次の3点だ。

デジタル経済(データ通信)については、データ流通の国際ルール作りに向けた交渉枠組み「大阪トラック」の創設で合意したいが、各国との意見調整は困難が予想される。米国は企業の自主判断に委ね、EUは企業に厳格な個人情報の保護を求め、中国は個人情報や重要な産業データの国外への持ち出しを制限しているためだ。

「貿易」については「貿易上の緊張に対応し、互恵的な貿易関係を醸成し、市場を開かれたものにするため、自由で公正で安定的な貿易環境を実現するために努力する」とされた。「世界貿易機関(WTO)改革の必要性」も合意された。

エネルギー・環境閣僚会合(6月15日、16日、軽井沢町)の共同声明には、「各国が廃プラ対策を報告する枠組みを新設する」「水素社会の実現や二酸化炭素を再利用する技術の開発など環境に配慮したエネルギーの技術開発を進め、環境と経済成長の好循環を実現する」「パリ協定の着実な実施」が盛り込まれた。

G20首脳会議では、協調体制を再構築し、世界経済の回復基調を維持出来るか、正念場を迎えることとなった。G20首脳がどう協調策を探り、議長の安倍首相が参加各国の利害が異なる中、一致点を探り「首脳宣言」をどう取りまとめるかだ。安倍首相の議長国記者会見は6月29日午後に行われる。

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