近年、若者の新聞離れや紙面購読の減少が続く中、新聞業界は日々購読者に対して様々な取り組みを行っている。また社会がデジタル化に向かって進みつつある中で、紙媒体としての新聞はどのような事業や変革を行っているのか、今回は新潟県新潟市に本社をおく新潟日報社に新聞購読の新しい取り組みや地方紙ならではの課題を伺った。(武蔵大学松本ゼミ支局=岡田 拓也・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)

新潟日報社社屋(新潟県新潟市)

1942年、新潟日日新聞・新潟県中央新聞・上越新聞の3紙が合併し、「新潟日報」が誕生した。1997年に売り上げが50万部を超えていた新潟日報であるが、その販売数は年々減少し、現在では約42万部と、ここ20年間で8万部ほど減少している。その理由の一つに購読者層の変化が挙げられる。

新潟日報は購読者層の生活スタイルが変化する中、夕刊の発行部数減少という状況を受けて「Otona+」というタブロイド判の新聞を発行している。一般的に、新聞社では紙面改革・紙面改造といった紙面自体を手直しするという方法をとるが、新潟日報の場合は考案から1年の月日を経て2016年11月に「Otona+」の発行を開始した。

「Otona+」は従来の夕刊の特徴である日々のニュースを伝えるだけでなく、毎日1面から3面は特集を組んでおり、脳トレや数独なども掲載することで高齢者の購読にもつながっている。

購読料金については、一般的に新聞の購読をする際、朝刊と夕刊セットで4,037円だが、新潟日報で朝刊と「Otona+」セットで3,980円の料金設定をしている(取材当時)。さらに年一回、読者3,000人を対象としたアンケートを実施し、よく読まれている記事を調査して構成に役立てているという。

新聞のデジタル化について、新潟日報では県内の新聞購読者のみが会員になれる「新潟日報モア」というサイトを運営しており、その会員は「モア会員」と呼ばれている。多くの情報は一般の人でも見られるが、モア会員は情報にフルアクセスできるという仕組みになっている。パソコンやスマートフォン、タブレット端末など、いろいろな端末で利用できるほか契約者をはじめ同居している家族だけの会員登録も可能になっている。

デジタル化の一端として、一般の人にも新聞のアーカイブを提供するため新潟県内の約10ヶ所にある図書館には、利用料と引き換えにデータベースを提供している。図書館では、一般の人たちが新潟日報のデータベースを閲覧することができるという仕組みになっているが、今後は個人的な問い合わせに対してどのようなアーカイブの提供を行うか検討しているようだ。

教育界と新聞界が協力するNIE(Newspaper In Education)への取り組みについて伺ったところ、1994年新潟県NIE推進協議会の発足以降は記者を教育現場である学校に派遣して新聞の読み方講座などを小中学生向けに実施していると語っていた。

理由としては、こどもの新聞購読の促進にはまず新聞と接するハードルを下げるのが課題になっているという。そこで新潟日報では、こども新聞を発行するなどして教育に新聞を組み込めるような活動をし、かつ教育現場に直接入り込んで新聞の魅力を伝えている。また、企業の新入社員に対して新聞の読み方講座なども実施しているなど新潟日報は教育現場にも活躍の場を広げている。




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