「社会的投資」を知っていますか。近年「SDGs・ESG投資」などが注目を集めるように、「新しい投資手法」のひとつとして、「出資者に対する分配金の還元以上に社会的価値を社会へ還元することに重きを置いた」金融商品モデルです。プラスソーシャルインベストメントは運営する投資型クラウドファンディングサイト「en.try」を通して地域の事業者を社会的投資で応援しています。今回は、滋賀県東近江市奥永源寺地区で行われている絶滅危惧種「紫草」を生かしたオーガニックコスメの取組について紹介します。(井上 佐和子)
滋賀県東近江市奥永源寺地区は三重県との県境近くに位置します。鈴鹿の山々で育まれた琵琶湖の源流が流れる自然豊かな里が特徴です。『宇治は茶所、茶は政所』と謳われた日本一の銘茶「無農薬在来品種の政所茶」や、日本のものづくりの原点「木工技術、木地師発祥の地」、万葉の時代から栽培されてきた絶滅危惧種の「紫草(ムラサキ)」に出逢える場所でもあります。しかし、近年は過疎化が進み、高齢化率が80%を超える限界集落となっています。
「この地域が持つたくさんの宝物で雇用を生むような地域活性化を目指していこう!」――動き始めたのは、兵庫県宝塚市出身の前川真司さんでした。
阪神淡路大震災を機に都会の脆弱さを目の当たりにし、街の復興と共に歩んだ後、高知県の農山村へ移り住んだ前川さん。村の住人はみな温かく、村全体が家族のような、一体感のある「文化と暮らし」がそこにはあったといいます。
農山村に恩返しをしたいと農業を学び、東近江市の農業高校の教員、また地域おこし協力隊として奥永源寺地区に移り住みます。そして、地域活性を目指し、地元住民や市民の皆さんから出資金を募って設立したのが「株式会社みんなの奥永源寺」でした。
無農薬・有機栽培の絶滅危惧種「紫草」
奥永源寺の体験ツアーや特産品販売を進めながら、絶滅危惧種の「紫草」を育て、その根っこ「紫根(シコン)」を使ったオーガニックコスメMURASAKIno ORGANICを開発。
地域の人たちと耕作放棄地を開墾し、市役所、高校、加工業者、デザイナーとの「産・官・学・創」連携で雇用を生み出しながら、冷涼な気候に恵まれた奥永源寺の地をいかした絶滅危惧種の「種の保存」を実現したのです。
この取り組みは、国内外で高い注目を集め、環境省のグッドライフアワード2018のサスティナブル・ビジネス賞の第一号企業に輝きました。
住み続けられるまちづくり -目指す次の未来-
そして、前川さんが次なる挑戦に選んだのが、社会的投資。投資型クラウドファンディングの「みんなの奥永源寺 MURASAKIno ORGANIC新商品開発・販売プロジェクト」。
近年「SDGs・ESG投資」などが注目を集めるように、「新しい投資手法」のひとつとして、「出資者に対する分配金の還元以上に社会的価値を社会へ還元することに重きを置いた」金融商品モデルです。
出資金を活用してオーガニックシコンコスメの新商品を開発、販路開拓することで、この地域にもう一度暮らしを取り戻し、人と環境に優しい「地域循環共生圏」をつくることを目指します。
アフターコロナ、SDGsというキーワードとともに時代は急速に変わっています。プロジェクト期間5年を走るための未来への投資、出資者という名の「同志」の募集が始まっています。
【みんなの奥永源寺 MURASAKIno ORGANIC新商品開発・販売プロジェクト】【こちらもおすすめ】
・SDGsと社会的投資の新しい関係
・ソーシャルインパクトボンド、潮流は民間委託
・「成果を求める」フィランソロピー