——東日本大震災がきっかけで、それぞれが自分自身の役割を今一度見直せたと思います。震災後に生き方が大きく変わった人も数多くいます。為末さんにとって、震災がその後の自分の競技人生にどう影響を与えたのでしょうか。

為末:活動の軸足を日本に置きたいと思うようになりました。米国に3年ほど住んでいるので、当初は陸上を引退したら米国で会社を起こそうと考えていたのですが、いつかは日本に戻って自分の役割を見つけて、それに専念していきたいと思うように変わりました。

ただ、グローバルな視点で何かしたいとは思っているので、軸足は日本に置きつつも世界展開をしていけたらと考えています。

——日々の練習においても自信を持つことは大事なことだと思います。為末さんが持つ自信はどこからきているのでしょうか。

為末:「自信を持とうぜ」などと言われても、そう簡単には自信は持てません。 仮に、そう言われて自信を持っていると感じたとしても、その自信に根拠がなければ、人間の深層心理ではどこか不安が残るものです。

ぼくの場合は、世界大会でメダルを獲得したという結果があるから自信を持てたというわけではありません。ぼくが自信を持てるのは、「あの時逃げなかった」とか、「自分で決めたルールを守れた」などの過程があるからです。

結果ではなく、その過程から自信はつくられている気がします。常に挑む姿勢で生きてほしいと思います。

為末選手が世界陸上ヘルシンキ大会で履いていたスパイク


■スポーツの力で世界平和を実現したい

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