——為末さんの夢を教えてください。
為末:2つあります。1つは学校を建設することです。場所はどこでもいいです。日本でもバングラデシュでも構いません。最後に僕がそこで死に絶えるまで子どもたちには「走れー」と言っていたいですね。(笑)
もう1つはスポーツの果たす役割で「世界平和」がすごく大きいと感じています。例えば、紛争などでこじれている国家間では政治的な力で人間ががんじがらめになり動けません。そして、交流がまったくなくなり紛争が深刻化していきます。
その状況を打破できる力が3つあると言われています。音楽などの芸術と科学、そして、スポーツです。この3つはしがらみや人脈、国境を飛び越えられます。政治の色がつかないので、これらの力が紛争で激化している地域間に交流をもたらして、状況を和らげることができます。
1971年のピンポン外交(日本で開催された世界卓球選手権の裏で米国と中国の間で交わされた外交)が良い例です。そんなことをもっと世界中でできると思っています。そして、各国の選手とともにいつか実現したいと思っています。そのころには、僕はもう走れなくなっていますが、若い選手に走ってもらいます。
——震災がきっかけで自分の道を歩み始める若い人が目立ちます。例えば、大学を休学して被災地支援活動に専念する学生や、卒業後に被災地へ移住する学生もいます。彼らは自らの道を選択して突き進もうとしています。為末さんは、 陸上選手として、自らの道を生きてきましたが、そのような学生にエールをお願いします。
為末:どんどん「はみ出る人」が増えてほしいと思っています。今の若者には、自分の人生とは何かと悩みながら、誰かに決められた道ではなく自分で決めた道を歩んでいってほしいです。レールから外れた人生を生きて、たとえ上手くいかなくても罪の意識を感じる必要はありません。
チャレンジをしていく人こそが、日本を変えていくのです。自分たちの思うように、これからの社会を創ってほしいです。
ぼくもオリンピッックが終わったら時間ができるので、そういう若い人たちを応援していきたいと思っています。
☆3 月 22 日(木)〜29 日(木)にかけて学生限定で「オルタナSを見た」で、 為末大さんへの質問を送りますと為末さんが答えてくれます!送り先→Twitter アカウント:@daijapan
為末大:1978 年5月3日広島出身世界大会において、トラック種目で日本人初となる2つのメダルを獲得した陸上選手。
『侍ハードラー』の異名をもつ世界ランク5位(自己最高)のハードラー。
身長の大きい選手が有利である中、170 センチという体躯ながら、ハードルを越えるテクニックで世界の強豪と対等の戦いを展開する。
2001年世界選手権で、銅メダルを獲得。2005 年ヘルシンキ世界選手権で、豪雨の決勝の中、銅メダルを獲得。
2009年からは拠点を米・サ ンディエゴに移し、ロンドンオリンピックに向けて調整している。