昨今、SDGsやパリ協定を背景に世界で脱炭素化が進んでいる。英国と中国では2035年、フランスでは2040年にガソリン車の販売を禁止する。日本でも、菅首相が2050年にカーボンゼロ宣言をした。

 Co2の排出を抑えるため自動車メーカーも抜本的な改革を進める。トヨタ自動車は環境の長期目標「トヨタ環境チャレンジ2050」を定め、「2050年までに新車平均走行時Co2排出量を90%削減」「ライフサイクル視点で、材料・部品・モノづくりを含めたトータルでのCo2排出ゼロ」「グローバル規模で工場Co2排出ゼロ」などの目標を掲げる。

 12気筒ガソリンエンジンを世界で最も多く生産している英国の高級車ベントレーもこのたび今後100年を見据えた事業戦略「ビヨンド100」を発表。2030年までにカーボンニュートラルの達成や2026年までにモデルラインナップを全車、プラグインハイブリッド(PHEV)とバッテリー電気自動車(BEV)に切り替える。

 各社で自動車のエコ化を進め、行政も補助金で購入を支援する。だが、この脱炭素の流れの前に、「貧困問題へのアプローチも忘れてはいけない」と中島社長は語る。

 「環境にやさしい自動車を作ることも重要だが、誰もが自動車を購入できる環境をつくらないといけない。信用問題で購入できない人が17億人もいる。彼らは働く意欲があり返済能力はあるにもかかわらず与信がなく、車を購入できないままでいる」

 一方で、同社と契約を結ぶ自動車販売店では、エコカーだけでなくガソリン車も販売している。このことについて中島社長はこう答える。

 「旧型のエンジン車を新型のエンジン車に代替することでも環境負荷は改善されます。一足飛びに電気自動車に代替するのではなく、まずは、新車を購入できるようにして、収入を上げてもらう。その先にエコカーや高性能な自動車を購入して脱炭素化社会に貢献できるはずだ」

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