PRS無償とは文字通り、途上国の貧困削減を目的に使われる援助だ。最大の特徴は、日本のODAの大半がプロジェクトに対して資金を出す、いわゆるプロジェクト型援助であるのに対し、PRS無償は「財政支援」であること。財政支援とは一言でいえば、途上国政府の保健や教育といったセクターの予算に援助資金を入れ、セクター全体を改善していこうというやり方だ。

援助の世界的トレンドをみると、財政支援はとりわけ欧州のドナー(援助国・機関)を中心に広がっている。主な援助対象はアフリカ諸国。財政支援では、ドナーと被援助国が一緒になって開発目標を策定し、被援助国が「主人公」となって開発計画を進める。ドナーは、目標達成に必要な資金を供与する。こういったプロセスの中で途上国はオーナーシップを強くもち、その結果、開発効果が高まるといわれる。

開発の主人公は途上国自身との考えはいまや主流だ。パリ宣言(05年)、アクラ行動計画(08年)、効果的開発協力のための釜山パートナーシップ(11年)という援助の国際会議の成果文書を見てもそれは明らか。経済協力開発機構(OECD)援助委員会(DAC)に加盟するドナー国(先進国のドナー)にとってはそれぞれ強みが異なるなかで相互に補完しあい、全体として開発・援助効果を高めていく。言い換えれば、中国をはじめとする新興国のドナーにはできない援助手法だ。

こうした潮流があるにもかかわらず、外務省はかねて、財政支援に後ろ向きの姿勢を示してきた。ただ財政支援をまったくしないとなると、被援助国の開発目標の設定にかかわることができず、日本の居場所がなくなる。このため外務省は2007年から財政支援を導入した。これがPRS無償だ。

これまでの実績は、ガーナ、タンザニア、バングラデシュ、ザンビア、サモアの5カ国で農業や地方自治、教育、保健などのセクターを対象に、援助総額は約48億円(07~11年合計)。金額のあまりの少なさから財政支援を「外務省は援助の“ショバ代”としかとらえていない」と皮肉る向きもある。

■「顔が見えること」より開発成果

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