では外務省はなぜ、財政支援に消極的なのか。その理由は突き詰めると5つに集約される。

1点目は、財政支援の開発・援助効果の高さに対する疑念。はっきりというならば、被援助国(途上国)に開発を任せて成果が挙がるかどうかだ。

これについて国際NGOオックスファム・ジャパンの山田太雲アドボカシー・マネージャーは「各種社会サービスへのアクセスが向上し、妊産婦や乳幼児の死亡率、初等教育の修了率などを見ても前進した国が実際にある」と成果を口にする。

開発・援助効果が低いケースももちろんある。ただそれは「財政支援そのものが悪いのではなく、政治・政策環境や政策一貫性の欠如が足を引っ張っている」と山田マネージャー。要因はさまざまで、たとえばドナーが被援助国のオーナーシップを尊重しない、または被援助国側のオーナーシップが低い場合や、地方政府が中央政府の言うことを聞かないケースもある。もっとひどいと、ドナーが被援助国に対して「病院の参入を認めろ」などといった条件を突き付けたり、国際通貨基金(IMF)が政府支出に上限を設けるよう勧告することもある。

2点目は、財政支援では日本の顔が見えないこと。確かに、橋や港、学校などを作るプロジェクトはわかりやすく、「フレンドシップブリッジ」などとPRしやすい。財政支援は、被援助国政府や他のドナーと協調して開発計画を進めるので、どこからどこまでが日本の貢献なのかはっきりしないという側面は否定できない。

これに対するNGOの反論は、外務省が唱える「顔が見える援助」よりも、開発・援助効果こそ重視すべきというもの。援助は一義的に、途上国の人たちに裨益しなくてはならないからだ。

では日本にとってメリットはないのか。山田マネージャーは「財政支援のプロセスを通じ、日本政府は被援助国の財務省と、資金を拠出する条件などについて対話しながら、費用対効果(バリュー・フォー・マネー)の高い援助を実現できる」と話す。

■政府がNGOと開発効果を評価へ

1 2 3 4