3点目は、二国間のプロジェクト型援助と違って、財政支援ではPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回し、援助・開発効果を把握しにくいという指摘だ。

NGOによれば、欧州のドナーは財政支援の開発・援助効果を追跡調査しているが、国際協力機構(JICA)はしていないという。行政事業レビューでも、評価者のひとりである松本悟・メコンウォッチ顧問は「(外務省は)他の援助スキームは見える化しているのに、財政支援はしていない」とコメントした。「JICAはODAの実施機関なのに、透明性の向上や評価などの意識が低いのではないか」(ODA改革ネットワークの高橋清貴世話人)といった批判の声もNGO側からは上がっている。

4点目は、ドナーが被援助国政府の予算に資金を投じることで、被援助国は「浮いた財源」を他の用途へ振り向けるだけではないのかという見方。

OECDの追跡調査によれば、財政支援を受けたセクター(教育や保健など)の国内予算は大きく増えているという。山田マネージャーは「財政支援は、お金を渡すだけではなく、拠出条件などの合意を通じて、被援助国の努力を引き出せる。予算増の呼び水になっている。援助依存は深まらない」と強調する。

5点目は、財政支援では被援助国側の関係者が増え、監視の目が行き届かなくなり、不正・腐敗が増えるのではという懸念。

オックスファム・ジャパンによると、プロジェクト型援助と比べて財政支援では不正・腐敗が多くなるという事実はどこにもない。むしろ予算に組み込まれる財政支援のほうが、現地の市民社会にとって援助資金の流れを監視しやすいため、不正・腐敗の撲滅に資するともいえる。

今回の行政事業レビューでは評価者から「PRS無償に知見のある国際機関やNGOとも協力して質的・量的評価をし、PDCAサイクルを確立すべき」との意見が出た。これを受けて、行司役を務めた中野譲外務大臣政務官はこの実現を約束した。NGOと共同でPRS無償(財政支援)を評価する方法を外務省はどう作り上げていくのか、NGOは注視している。(長光大慈)


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