「無形文化」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。日本では重要無形文化財と言い、世界ではユネスコ総会が無形文化遺産というものを採択している。それぞれの定義は異なるが、一般的には演劇や音楽、工芸技術そのものを指し、形として残りにくいものをいうようだ。

EDAYAでは、敢えて「無形文化」という言葉を使っている。「様々な定義はあるけれど、無形文化遺産に登録されていない無形文化だって必ずあるはず。そして私たちが何を無形文化と思い、何を次の世代に繋げたいと思うのかを大切にしたかった」と、山下さんは話す。

昔から受け継がれてきた音楽や伝統技術の背景には、必ず人の存在がある。大昔おばあちゃんが孫に教え、その孫が大きくなり自分の子供へと教える。そうして代々伝えられてきたものが、今日の私たちに受け継がれているのだ。

歴史の教科書には載っていない名も無き人たちの人生が、それらには詰まっている。山下さんは、そういった一人ひとりの人生に想いを馳せる。

山下さんが言う無形文化とは、そういった目には見えない背景も含めたものを指す。そのため例え目に見える伝統楽器であっても、それらの背景も含めて「繋いできた人々の生きた証」なのだと、語った。

失われつつあるフィリピンの無形文化

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