フィリピンのルソン島北部は、1500~2000m級の山々が連なる。そこで暮らす山岳民族のかつての暮らしは、自然の恵みに感謝して日々を過ごすというシンプルなものだった。そこには、世代から世代へと受け継がれてきた豊かな文化があったという。

しかし、貨幣経済の導入や携帯電話の普及で、彼らの生活は一変した。フィリピンの公用語の一つが英語であるため、欧米の情報を瞬時に理解することができる。そのため、若者が外の世界に憧れを抱くようになるのに時間は掛からなかった。彼らは自文化を顧みなくなった結果、受け継がれてきた無形文化が失われつつあるのだ。

現地の人の意志ありき

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