美瑛カレーうどんから始まった中田氏プロデュースの新・ご当地グルメは、その後も全国で開発され、現在、30以上の商品が世に出ている。なかでも、宮崎の「日南一本釣りカツオ炙り重(2010年デビュー)」や、北海道の「富良野オムカレー(2006年デビュー)」はヒットケースの代表で、今や観光の名物となり、交流人口の増加に貢献した。
ヒロ中田氏は、新・ご当地グルメ成功のボーダーラインを「1日1店舗2000食」と定めるが、これらの地域では、1日5000~10000食に達する店舗も複数あるという。もちろん、第1号の美瑛カレーうどんもヒットケースのひとつだ。
さらに、各地の新・ご当地グルメを集めた「新・ご当地グルメグランプリ」というイベントも、北海道で年1回、夏に開催されている。1食500円で提供される各地域の料理を来場客が評価し、注文数を加味して順位を競うこのイベントは、新・ご当地グルメの存在をアピールし、ひいては地域の魅力を伝える貴重な場になっている。
もちろん、商品化された新・ご当地グルメのなかには、その料理法の新しさゆえに、開発段階で地域の人から大きな反対を受けたこともあった。だがそのたびに、地道に意図を説明し、地元の人との信頼関係を築いてきた。
「新・ご当地グルメは、デビューしたら終わりではありません。10年後も定着して初めて成功といえる、長い挑戦です。だからこそ、関わる人の覚悟が必要。郷土愛や地域の将来を冷静に見る力、あるいはボランティア精神がなければ、続けられないかもしれません。これからは、そんな心意気のある、いわば『地域バカ』の人たちがどんどん増えてほしいですね」(同)
中田氏が掲げる「新・ご当地グルメ8カ条」の中には、開発の際、「継続的な運営・プロモーションを行う組織を作ること」が定められている。また、商品のプロモーション費用などを継続的にまかなえるよう、地域一体となった売上システムの構築をも商品開発とともに行う。一時的な話題作りではなく、長期的な視野にこだわる彼の強い気持ちが、ここに表れている。
中田氏は、「新・ご当地グルメによって産業が活気づき、その地域に住む人々の人生観にプラスの変化が生まれれば」と語る。美瑛カレーうどんが登場して今年で8年。10年以上定着する新・ご当地グルメの開発を目指し、これからも彼は全国を飛び回る。(オルタナS副編集長=池田真隆)
【ヒロ中田氏プロフィール】
株式会社リクルートライフスタイル じゃらんリサーチセンター エグゼクティブプロデューサー
広島県出身。1984年、慶応義塾大学法学部卒業の後、リクルート入社。10年間人材採用ビジネスに携わった後、海外旅行情報誌「エイビーロード関西版」副編集長を務める。1996年より「北海道じゃらん」副編集長、編集長を歴任。2009年4月より現職、現在に至る。
■リンク先URL
新・ご当地グルメ公式サイト
http://www.shingotochi.com/