バナナの輸入が自由化された1960年代、フィリピンに大規模農園が広がるとバナナは一気に日本へと流れ込み、国民的な食べ物となった。日本の輸入果物の約6割をバナナが占めており、年間100万トンの需要量を支える大量生産を図るため、多くのシステム化された大規模農園では大量の農薬や化学肥料が使われ始めた。
輸入食品の安全性が話題になると、決まってやり玉に挙げられていたのがバナナ。昨今の工業化された大量生産型のバナナ栽培は、農薬と化学肥料によって生産効率を追い求めた結果生まれたものだ。
「農薬や化学肥料は画期的な発明ですが、そういう中にあって別の選択肢もあっていい。大量生産の工業製品のような作り方ではなく、農産物として大切にバナナを作ることを考えています。手間暇がかかって効率は悪いですが、自然の営みの中で生まれた美味しいバナナを作ることができるんです」(田邊さん)
■自然の営みの中で育つバナナ