田邊さんは、「自然循環型農業」の挑戦者。必要最低限の農薬だけを使い、自然の循環を利用した土壌に無理をさせない農法を確立し、安心・安全への徹底したこだわりと環境に配慮したバナナ栽培をしている。

田邊さんのバナナのこだわりは、まず土づくり。雑草はバナナの成長を妨げるので、農薬を使って除去するのが主流で、下草のないむき出しになった土には、他の生物は全く寄ってくることがなかったという。田辺農園では除草剤や土壌消毒剤は一切使用せず、化学肥料の代わりにボカシ肥料(有用微生物群の働きを利用した有機質肥料)を使用している。土はやわらかく、下草がびっしりと生い茂っており、人工的ではない自然の営みを感じることができる。

田辺農園では、バナナの葉や茎、さらには日本市場の規格に合わない廃棄バナナを有効活用し、肥料として畑に還元している。栽培の過程で廃棄されるバナナの量は、世界中で年間10億トンにも達すると言われており、田邊さんはそうした現状に強い疑問を感じたという。専用の堆肥場で廃棄バナナ等をミミズに餌として与え、排泄された糞が堆肥となる。生産された堆肥はバナナの根元に撒かれ、自然のサイクルが循環していく。

肥料へと生まれ変わる大量の廃棄バナナ

■生産者に必要なのはバランス感覚

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