そんな中、麻子さんは、他の人への指示も必死にメモをとり、下絵の練習を重ね、隆さんの信頼を着実に勝ち取っていった。

麻子さんのそんな努力が、「独り立ちに最低10年」という世界で、弟子入り4年で本格デビューという、異例のチャンスを引き寄せた。

去年麻子さんが数カ月を開けて作った小型ねぶた二つの成長ぶりを見て、「青森市民ねぶた実行委員会」から、大型ねぶた制作の依頼があったのだ。

昨年の11月に依頼があった際、当初、隆さんは、「3年早い」と断った。しかし、若手の育成にも力を入れる「青森市民ねぶた」としては、「何も、すぐに賞をとれと言っているわけではない。3年早いなら、3年うちで勉強してもらえば良い」という思いで、麻子さんに直接意志を確認したところ、答えは「やりたい」。

「成せば成る」の精神で、麻子さんは勤めを辞め、ねぶた作りに専念した。

東日本大震災の被害者への想いを込めたねぶたで、新人としては異例の優秀制作者賞を受賞

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