生態系の問題だけでなく、海の環境や気候変動に対しても乱獲には問題である。

natureに掲載されているDr.Peter Macreadieのブルーカーボンの論文のソースによると、「沿岸植物が1エーカーで蓄えられる炭素は地上の木の20倍。地球上の二酸化炭素の93%は海洋植物が海に留めている。生態系の1%の損失は車9700万台分の大気汚染に相当する」という。

トロール漁の漁業は海に甚大な被害を及ぼす。トロール漁の最も大きな網はなんと大型ジェット機を13機も飲み込むほどの大きさ。生命豊かな海底は重いトロール網に傷付けられ跡形もなくなる。

FAOのstate of the world’s forests 2020のソースによると、1年間に失われる森林は約2500万エーカー。それは1分間当たりサッカーコート27面分にあたる。

一方、トロール漁は毎年38億エーカーを破壊している。それは、なんと1分間当たりサッカーコート4316面分の海底を破壊しているということだ。

シーシェパード創設者のポール・ワトソンは、「これだけ魚が減っている中、サスティナブルな漁業など存在しない。サステナブルシーフードは全てビジネスのための欺瞞である」と言う。

アリ監督は海洋保護団体のOCEANAにも取材をしたが、「サステナブル漁業の定義」もしてもらえず、「魚の摂取量を減らそう」ということをホームページに掲げては?と質問してもはぐらかされる始末。

サステナブルシーフードを提唱する世界最大の機関のMSCは劇中何度も出てくるが、オンラインでもオフラインでも終始対話拒否。

アリ監督が調べると、MSCの共同創設者のユニリーバは魚の小売業をしているが認証を得られなかった船はほとんどないという。また資金に関しても3000万ユーロ近い80.5%がシーフード認証料という、マークを付与すればするほど儲かる仕組みだという。アリ監督は二度とMSC認証マークが信用できなくなったという。

プラスチック問題、乱獲、混獲、漁業による環境破壊、海洋認証マークの闇、もうこれだけでもお腹いっぱいだが、漁業はまだ違う問題へと繋がる。それは、お金や違法漁業の問題だ。

3500億ドルの補助金が漁業産業へ。国連はこの金額で世界の飢餓は解消できるという。

EUから補助金をもらいヨーロッパの漁船が西アフリカで漁業をすると、現地の漁師たちは太刀打ちできない。最初は食糧安全保障のための補助金制度だったが、いつしか発展途上国を脅かすものになってしまっていた。ヨーロッパだけでなく、アメリカの輸入天然魚の1/3は貧困地で違法に漁獲されたものだという。アリ監督はシー・シェパードの船に乗りリベリア危険な直接取材に出る。ここでの違法漁船の混獲の映像は衝撃的過ぎて観ていて私は胸を痛めた。

西アフリカでEUによる漁船や、多方からの違法漁船により地元の漁師が魚を捕れず生計が立てられないだけでなく、町に食糧不足をもたらすのでそれは沿岸部だけでなく内陸にも影響をおよぼす。

彼らは魚の代わりに森を切り開き野生動物を狩る。しかし、それが原因でエボラ出血熱などの感染病が蔓延。西アフリカのエボラ蔓延の原因は漁業によるものだという文献も出ている。

劇中には出てこないが、コロナウイルスにおいても野生動物と感染症の関係は論争が続いている。

次のトピックは養殖だ。

混獲もなく海底も傷つけない。養殖ならサスティナブル?いや、そうでもなさそうだ。

養殖の問題は、海の汚染、病気、魚が食べる餌。

鮭を一キロ育てるのに1.二キロの餌。餌は魚粉と魚油で結局大量の魚が使われてる。養殖では問題の解決にならなそうだ。

そして、世界で食される海産物の50%は養殖という規模感。スコットランドの一つ養殖場が排出する有機廃棄物は20000人分の人間のそれに相当する。スコットランドの全ての養殖場の有機廃棄物の量はスコットランド人口のそれに相当する、という。

ここで個人的に初めて知り驚いたのは、鮭のピンク色にはカラーチャートがあり、好きな色に染められるということ。本来は灰色のようだ。

ジョージ・モンビオットさんは「マングローブは嵐や洪水から守ってくれる防波堤の効果があるが、マングローブの38%はエビの養殖によって破壊されてしまった。さらにエビの養殖産業はブラッドダイヤモンド同様、奴隷の温床だ」と言う。そう、次のトピックは漁業と奴隷などの海洋人権問題について。

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