前にレビューを書いた「COWSPIRACY〜持続可能性の秘密」や「What the health(健康って何?)」などを監督したキップ・アンダーセンが制作責任者を務めた今回の新作「SEASPIRACY〜偽りのサステイナブル漁業〜」。監督はアリ・タブリジ氏、Netflixのみで3/24から世界190ヵ国で公開されている。(石田 吉信・Lond共同代表)

このドキュメンタリーは終始衝撃的で、まさに畜産業による環境問題を取り上げたドキュメンタリー「COWSPIRACY」を再び彷彿とさせた。

最初から最後までエビデンスに基づかれたシリアスなトピックに溢れ、どこを抜粋すればいいのか迷うほどだ。可能な限り劇中の引用をしたいので、私の感想は最小限に抑えるとする。

冒頭から、海の生態系を守るのにとても重要な「クジラ」が世界中のビーチで打ち上げられ、その胃の中から大量のプラスチックが検出されるというセンセーショナルな内容から始まる。

そこで海や海洋動物が好きなアリ監督は、脱プラに目覚め、マイボトルやマイバッグに目覚め、ビーチクリーンを始めるが、「毎分ゴミ収集車1台分のプラスチックが海に捨てられている」ことや、既に「1億5000万トンのプラスチックが海を漂流している」ことに目眩を覚える。

そんな時に、監督は日本がIWC(国際捕鯨委員会)を脱退し、商業捕鯨を始めるニュースを目にし、日本の和歌山県太地町へ向かう。年間700頭のイルカや鯨が追い込み漁される太地町では1頭のイルカを捕まえるのに12頭のイルカが殺されていることを知る。シー・シェパードのタマラさんは「それは漁獲量を増やすため」にイルカの量を減らしているのだと言う。

1頭1000万円以上で水族館に売買されるイルカ。水族館に行った時に、そのイルカが果たして何処から来たのか考えたことがなかったことに私自身気付かされた。

次にマグロ漁港を見に行くアリ監督。そこで観たのはクロマグロの乱獲であった。乱獲により50年前から3%以下に減少。また、その漁港では大量のサメのヒレがフカヒレのために切り取られ、身体は海に捨てられていた。

サメもまたクジラやイルカと同様に生態系を守っている。オナガザメ、オオメジロザメはここ数十年で80〜99パーセント減少しているという。

海洋学者カラム・ロバーツ教授は、「1950年から海鳥を調査しているが、現在は7割減少した。クジラやイルカやサメなど上位捕食種が捕獲され過ぎてるせいで、生態系が崩れて餌が取れなくなったせいだ」と言う。

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