エンバイロメンタルジャスティス財団のスティーブ・トレントさんはインタビューで、
「海洋奴隷の実態は海上のため掴むのが難しい。タイ海域では51000もの漁業船が国旗を立て営んでいるという。競争の激化により低コストな漁業法が求められ、産業が脆弱化し、低賃金でしか成り立たなくなってしまった」と言う。
タイにリスクを背負い極秘取材に向かうアリ監督。タイの強制労働、奴隷などによる商業漁業への潜入取材と、実際に奴隷船に乗っていた当事者への取材。そこで話される内容はパワハラのレベルではなく、殺人が起こっていたという。
ドキュメンタリーも終盤、アリ監督はフェロー諸島デンマーク領での古式捕鯨を取材に行く。ゴンドウクジラ漁は持続可能な捕鯨だとseafoodsourceというメディアで紹介された。絶滅の危機になく、環境に悪影響はしない、という。
その追い込み漁にカメラを向けるアリ監督。その壮絶な映像、首元を切られ絶命する大量のクジラ。真っ赤に染まる海。ビジネス。そこに生きる人々。食事。命。
アリ監督は何かを悟ったかのように。
「持続可能とは〈繰り返せる〉ということ。それは痛みを伴おうとも」と気を落として言った。
フェロー諸島 捕鯨員ジェン・モータン・ラスムセンさんへのインタビュー。
「私は捕鯨を悪だとは思わない。鯨一頭の肉の量はニワトリ2000羽に等しい。私は2000羽を守り、1頭を殺す。そういう意味で私よりひどい人間はたくさんいる。例えば昨晩サーモンを食べたという。4人で食べれば2匹は殺してる。鮭は平気で殺すのに捕鯨は悪だと主張する人たちだ。ベジタリアンから言われるのならば理解できるけどね。魚もニワトリも鯨も命は等しい」と言う。
アリ監督はここで、「サステナブルな観点で海洋生物たちを見てきたが動物の気持ちを考えたことはなかった」と霧がかかる海辺で独り思いふける。
海洋生物学者のシルビア・アール博士は「魚は痛みを感じる?とよく聞かれます。魚には神経系があり、魚には脊椎動物として基本的機能は備えている。人間に触覚があるように魚にも側線という器官がある。側線が水の繊細な動きを察知して群れで泳ぐのを可能にする」と言う。EU科学委員会は魚は、痛みや恐怖や痛みを感じると発表した。
この映画は最後に魚を食べることのリスクに触れる。ミカエル・グリーガー医師へのインタビューで、「魚介類を食べることで減るのはまず水銀、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル、残留性有機化合物、毒性重金属、ヘキサクロロベンゼン、プラスチック化合物、難燃性化合物、思いつく産業汚染物質はだいたい魚に含まれている」と言う。
ジェーン・ハイタワー博士(医者)は「水銀は体にとても有害だ」と言う。産業廃棄物の水銀がプランクトンへ、それが小さな海洋生物から大きな海洋生物までの食物連鎖で残り生物蓄積していくと言う
海洋生物学者のドミニク・バーンズさんは「オメガ3脂肪酸は藻類から得ることができるし、今は代替シーフードで味はそのままにコレステロールやPCB、水銀をカットした食事ができる。植物由来の代替食品こそこれからの進むべき方向だ」と言う。
アリ監督はこの壮大な問題をはらんだ海の旅を終え、海を守る最善の選択は「魚介類を食べないことだ」と結ぶ。
最後にドミニクさんが言っていたように今はシーフードにせよ、代替肉にせよ選択肢が増えてきている。筆者も最近原宿駅のじゃんがらラーメンがその2階にニューオープンした「ヴィーガンビストロじゃんがら」にハマっているが、言われなければそれが肉ではないとは気づけないだろう。
インスタグラムでは「#買い物は投票」というハッシュタグが伸びている。これからを生きる我々は何を選んでいくべきなのか。
もちろん、生きている上で習慣、文化、職種などによりすぐに受け入れられないこともあると思う。でも、全員が「しょうがないよね」で済ましたままこの世界を続けていいのか、自分に何か配慮できることはないのか、本当にこの世界はこのまま人類が好きに生きていって破滅しないのか、「学ぶこと」が大切。
このドキュメンタリーも一つの大きな判断材料になると思う。でもこの映画は漁業に対しては圧倒的に否定的なので、違う側から描いたものがあれば多面的に情報収集をして、日頃の消費行動や政治参画をしていけるといいのではないかと思う次第である。
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